SCSIDNIKUFESIN

31 Dec, 2011

▼2011に聴いたものをまとめてみます。回数は聴いていなくても、いい出会いをしたというものはとりあえず含めてしまっています。

新譜・準新譜

MR. BIG「WHAT IF」
前進と期待消化を高いレベルで一挙に達成した、理想の再結成アルバム。日本のアラサーメタラーが最も震えた盤なんじゃないでしょうか。この次も期待してます。
FOO FIGHTERS「WASTING LIGHT」
作風は同じようなものでもインターバルを空けてくれたせいか、解散前ラスト作で感じられた煮詰まり感が払拭されて、洗練と武骨をいいバランスで配したカムバック作に。やっぱりロック、と思わず漏れる。
ANTHRAX「WORSHIP MUSIC」
何がどうならもっとこうだったのに、と複雑な思いもありながら、長年敬愛するバンドがきっちり「新作」に聴こえる新作をまた出してくれたのは嬉しいイベントでした。来日が2度にわたってポシャったのは一方で絶大なガッカリ。
ENSLAVED「VERTEBRAE」
ノルウェーヴァイキングブラックの知性が行き過ぎて普遍的現代アートの域まで達してしまったミラクルな1枚。非メタル耳の人に勧めたいナンバーワン作品でした。
DIO「AT DONINGTON UK: LIVE 1983 & 1987」
これは新譜と言っていいのか分かりませんが、ともかくニューリリースということで。メタルの美しさとロニーの神性が集約された奇跡の記録。
TAYLOR HAWKINS & THE COCKTAIL RIDERS「TAYLOR HAWKINS & THE COATTAIL RIDERS」
準がつくにしても新譜の範囲広げすぎですが(06年リリース)。どメジャーの中にこんな伏兵がいたとはと嬉しくなった1枚です。買ったばっかりだけど印象的な出会い方だったのでピックアップ。

旧譜

BERNIE MARSDEN「LOOK AT ME NOW」
「YESの実体はジョン・アンダーソンではなくクリス・スクワイアである」的な例として、初期WHITESNAKEのいいところを実は全部担っていた元ギタリストのソロ。マイナーな品ですが、心あるハードロッカーなら積極的に掘り起こしてもらいたい内容です。
SILVERCHAIR「FREAK SHOW」
グランジってこうやるんだぜ!という二次創作をズバーンと提示してくれた会心のアルバム。当時の音でしかない。オリジンをひとしきり踏まえて、で要約すると?と問うたときの答えです。褒めてるんだか何なんだか。
MOTORHEAD「MARH OR DIE」
パンクスからも愛される暴走バイカーズ・ロックだったはずのMOTORHEADがこんなこと(超鋼鉄化)に。しかしそこにはレミーにしか出せないシブみが。バンドの歴史で2番目の名盤ってことにしてもいい93年作。
HEART「BRIGADE」
女性ヴォーカルA級メロハーの至宝的アルバム。エッジの立ち具合はあくまで「ロック/ポップス棚」の感じですが、その線でいえばドン・ヘンリーの「THE END OF INNOCENCE」と並びます。ああ伝わらない例。
LYLE MAYS「LYLE MAYS」
「清廉としながらもピシッとシャープな半ポップス・テクニカルフュージョン」が割と好きだと思っていたのですが、これを聴いてもう若手の新作を買い漁るのはヤメようと決めました。「パット・メセニー・バンドの一部分」には決して収まらない好作。
RICHIE KOTZEN / GREG HOWE「TILT」
HM/HRマナーのシュレッドを本格フュージョンに落とし込んだら凄い、ということにEXIVIOUSですっかり目覚めまして、こちらはその15年前に更にバリバリやっていたという作品。非メタラーでも羨望できるバカテクプレイが山盛り。
PSY・S「HOLIDAY」
汎用ポップスとして最高な「ATLAS」と迷いましたが、クリエイターとしての底力をサラッと開陳して更にその奥があることまで匂わせるこの作品の何ともいえない佇まいに軍配。
WILLARD「STEEL MILL」
今年は「知らないグランジバンドを敢えて調べて買う」のをよくやりました(まだ買えてないのがたくさん)。その中でひときわ印象に残った、TADより更に低く醜く行くシアトル激重番長。初期デスメタルのビッグバンと時期的にほぼシンクロするグランジの勃興と隆盛、依然強烈に惹きつけられるテーマのひとつです。
他に含めようかどうか迷ったのはSAHARA「GOING CRAZY」STRANGEWAYS「WALK IN THE FIRE」ENUFF Z'NUFF「TWEAKED」、FREAK OF NATURE「GATHERING OF FREAKS」、BUCKETHEAD「GIANT ROBOT」MILLIGRAM「THIS IS CLASS WAR」FILTER「TITLE OF RECORD」TRULY「FAST STORIES... FROM KID COMA」TOTO「HYDRA」など。ウェブで情報収集して格安の中古があればオンラインで敢えて買う、というのを円高の助けで割とたくさんやれたのが救いですが、基本的には入手の段階で通る「中古でたまたま行き当たった」+「安く置いてあった」というフィルターが強くなってるので、まるで場当たり的で偏ったチョイスになってしまいました。聴取生活の充実はほどほどでいいかなと思う自分もおり。来年は、最低限年末に寂しく思わないくらいに良作・好発見ができればなーと思います。やる気を失くしたというより、停止はせず厳しく選り分ける方向で。
中古盤屋に面出しで並ぶようなホットな作品をガシガシ買ってた頃に比べてアクセス数はずいぶん減ってますけども、それでも見続けていただいている数少ない皆様、2012年もどうぞよろしくお付き合いを。
RICHIE KOTZEN / GREG HOWE「TILT」

本日のレビュー:RICHIE KOTZEN / GREG HOWE「TILT」

↑のチョイスに入っていながらまだレビューがなかったこのアルバムを。リッチー・コッツェンはMR. BIG(や一瞬POISON)にいたことでもお馴染み、ソウルフルと激弾きの両立を果たす孤高の腕前と、リードシンガーとして充分やっていけるノドをもつ才人ギタリスト。グレッグ・ハウもコッツェンと同じくSHRAPNEL RECORDS出身の黒人ギタリストで、フュージョン寄りながら絶妙にメロディック、かつフランク・ギャンバレの中身をジョン・ノーラムにすげ替えたような(割と適当に言いました)パッショネイトなシュレッドをこなすスタイルの持ち主。近い線にいながら微妙にテイストのずれたこの二人がガッツリ共演を果たした95年作です。
お座なりなバック演奏にソロだけ乗せました、録音は別々のスタジオです、てな類の「共演企画盤」とは全く違い、スティーヴィー・ワンダーのカバー(!)を除く全8曲はどれも二人どちらかの書き下ろし。ロックなリフを一発ブッ放してぇ~、みたいなださい曲はひとつもなく、転調しまくり、高速ユニゾンありあり、変拍子バッチリ、でも情緒もそれなりにメロメロ、みたいな充実ぶりが嬉しいところです。
粒の正確さを保ったままブルッとフルスロットルに入ると天井知らずで加速するグレッグ・ハウの熱さに対し、リッチー・コッツェンはピッキングのニュアンスや芸の細かいベンドでハイテク機械化ジェフ・ベックともいうべき表情を見せる余裕で応え、潰し合わずにお互いを引き立てあう呼吸のよさ。華麗なアウトを挟むスウィープ含みの超絶レガートプレイ×2が、攻守の温度差を巧みに切り替えながら繰り出されるさまは、相当えらいことです。これだけの内容なのに、ドラムがエレドラくさくて(叩いてるのは人らしい)なんとなーく聴感上の印象が貧乏くさいのがちょっと残念なような、それでこそSHRAPNEL…とニヤついてしまうような。
総じて、HM/HR界におけるギターインスト作品トップ20にランクインすることは間違いなさそうなアルバムかと思います。「なんか凄いの聴きたい」という人はどうぞ。