SCSIDNIKUFESIN

11 Sep, 2011

本日の収穫、今池P-CAN FUDGEでVAN DER GRAAF GENERATOR「H TO HE WHO AM THE ONLY ONE」、LINDSAY COOPER「MUSIC FOR OTHER OCCASIONS」、315円コーナーでLYLE MAYS「LYLE MAYS」(パットメセニーグループの鍵盤奏者86年作)、VAI「SEX & RELIGION」(大名盤93年作、ようやく外盤買い直し)。2日連続でリアル店舗でCD漁りをしただけでも、ちょっと使ってなかった脳みそをひさびさに使った気分です。右手の指2本(人・中)でパタパタとCDの列をさばき、上方3分の1程度だけ見えるジャケからバンド名を確認したり作風を推察したりして、その指の運動に集中しすぎないようにしながら注意深く気になる品をピックアップ、よく分からないバンドの場合は年代やレーベルや曲名から内容や完成度を妄想、買ったあとの自室での処遇もイメージしたのち振るいにかけていざ試聴。そこでそのミュージシャンの創造性の核心を悟ったり(自分なりに)、作品を作り続けることや変化することの意味を考えたり、聴く自分の感受性の変化、普段ただ好きだと思っているものと自分の実際の距離などを(出費が発生することによって)認識しつつ購入。評判や記憶を頼りにネットで30秒のサンプルを試聴しまくるのもスマートで楽ですが、現実のマテリアルと対面するこういう泥臭いおこないの良さは「泥臭さの風情」だけではない感じがします。
VAN DER GRAAF GENERATOR「H TO HE WHO AM THE ONLY ONE」

本日のレビュー:VAN DER GRAAF GENERATOR「H TO HE WHO AM THE ONLY ONE」

実はあんまり顕著にピンと来たことがないVDGG。イギリスの70年代プログレというとPINK FLOYD、KING CRIMSON、YES、EMERSON, LAKE & PALMERがいて、そこと同列扱いかどうかというところにGENESISがいて、さらに代表的なバンドを付け加えるなら…というところで出てくるのがGENTLE GIANTかCAMELかこのVDGGであります(※カンタベリー/R.I.O.系は別扱い)。USスラッシュメタルでいうところのMETALLICA・ANTHRAX・SLAYER・MEGADETHがいて、EXODUSがそこに次いで、TESTAMENT・OVERKILLがいるっていうのとちょうど似た感じですね。
もともとは半ば教養的に興味を持っただけなんですが、できればちゃんと分かりたいと思ったのは、VOIVODが一番影響を受けたプログレバンドとしてこの人達の名前を挙げていたからなのです。しかし聴けども聴けども、PINK FLOYDを漫然と雄大・大仰かつSSW風にしたような曲か、それがこなれてしっとりしたようなものばかり(後者はけっこう好きだった)。代表作といわれる4th「PAW HEARTS」収録曲の中で辛うじて瞬間的に暴れパートがあるにはあって、この一瞬に影響を受けたのかVOIVODは?とどうにも釈然としていなかったのでした。
で今回ようやく、初~中期で唯一持っていなかったこのアルバムを捕獲。序盤はやはりSSW風PINK FLOYDないつものやつが続きます。結局このバンドは構築性云々のプログレというより、サイケの延長でアーティスティックになってしまっている人達なのかなと思います。ピーター・ハミルというだけで泣けるという人にとってはここで既にボルテージ最高潮のはず。3曲目でちょっと気合の入ったジャズロック風のパートが出てきて少しオッと思って、4曲目。これでした。オーバーダブされたフルートのハーモニーとオルガンが鋭いリズムで急襲。その節回しに貼り付くリリック。メカニカルな緊迫感とサイケな拡がりが共存するこの雰囲気は確かにクリムゾンともHENRY COW以降の一派とも違う独特なものです。そのスリルだけで楽しませてくれるほど要領のいい圧縮型ではなく、例の朗々としたパートを挟みながらにはなりますが、メタルとハードコアをちょっと足して煮詰めたらVOIVODの隠れ名曲"Missing Sequences"あたりの感じになりそうです。
続くラストの5曲目も長尺で、同じく途中にやや変態要素を挟んでくれてます。大抵の事象がどこかのカテゴリに収まっているきょうび、たらーっとやって「いや、これ自体が味なのです」というものは理解されるまでに時間がかかりがちなわけですが、そういう点でこのアルバムは彼らの作品中一番わかりやすいと言えるものになっているかなと思います。