カナディアンスラッシュの今や古株・ANNIHILATORの4th。この前作が出たときに、ヤングギター誌のレビューでは「カナダのMETALLICA」との形容を見た記憶がありますが、もっとチクチクネチネチした偏執的な技巧性が彼ら…というかギタリストのジェフ・ウォーターズの個性です。どこかサイコな響きのする不協和音を好み、バッキングギターもソロも異常な(物理的にジャストであるという以上の)タイト感。デビュー以来しょっちゅうメンバーを入れ替えてのリリースを続けているわけですが、そんなことには気付かないくらいブレません。初期2枚は順当にスラッシーかつ起伏の多い展開で聴かせる技巧スラッシュ路線で注目を集め、正念場の3枚目「SET THE WORLD ON FIRE」で時流にならってスローダウンを敢行、ついでにJUDAS PRIESTの前座を務めた経験からオーソドックスなメロディックメタル色もぐっと強め、曲としてのツカミががっちり大きい90年代メタルの良質な形を提示したのでした。その後、何があったのかドラマー以外が脱退してしまい、これまで専任ギターに徹していたところを遂にヴォーカルまでとり始めてしまったのがこの4枚目。ベースもジェフが弾いていて完全に「ドラム+俺」アルバムになっています。結果、違和感はゼロ。もともとベースはほぼギターに追従するのみだったし、ヴォーカルも今まで自分に似たタイプの人材を選んでいたんじゃないかというくらいスンナリはまっています。「歌うダミ声」タイプでクリーン声もOK、声質・歌唱ともANNIHILATORの音楽性には充分。後回しになってしまいましたが肝心の楽曲はというと、ややヘヴィ方向の振れ幅が延びた感があるにせよ、構成も完成度も前作の残像といった印象。勿体つけたヘヴィリフの遅い曲で始まって、正統派風ツーバスチューン、クリーンのアルペジオで始まって豹変するダーク&テクニカル路線、パワーバラード…とバラエティのつけ方もまったく一緒。ギターソロのフレーズまで似ていて、前作であまりに上手い具合に大成してしまったばっかりにその成功パターンに浸りすぎてしまったようです。ただキレの鋭さやキャッチーなフックなど、良い部分も同等なので、こっちを先に聴けば別に何とも思わないであろう出来。非メタラーの人がたまたま手にとっても、メタルの特殊性を生かしたかっこよさを充分楽しめるアルバムになっていると思います。