SCSIDNIKUFESIN

11 Dec, 2015

▼ひどいもんで、これからは考えずにサクサク更新しますといったそばから1ヶ月空いてますが、話の流れから急遽出すことになった音源(ドイモイ、1曲のみ)のミックスにずっと苦戦していてまだ継続中です。が記憶が鮮明なうちに書いておきたい、12/5ハックでのTHE LIFE AND TIMES名古屋公演のこと。

カンザスシティエモグランジの代名詞・SHINERの元メンバーであるアレン・エプリー率いる3人組、THE LIFE AND TIMESの来日ツアーの名古屋編を、StiffSlack社長・新川さんのslavedriverと共に我々もサポートさせていただいたのです。9年前の来日時も得三で共演したんですがその頃はまだライブを総計10本もやってない頃で、しかしTHE UNDERCURRENT、NAHTとの4組というなかなか豪華な内容でした。がTLATメンバーとはあまり絡めず。今回は一念発起してかなりがっつりユニティできたので、時系列で思い出せる限り書いていきます。ツアー終わっちゃった後遺症で魂が抜けている皆さんに捧ぐ。長編です。

▼リハ入りは17時頃(出演順の逆で我々が最後)で充分だったところを、メインアクトをリハから見れるなんて最高じゃないかということで早めに会場入り。ハックのフロアのドアを開けて正面に、さっそく御大アレンが座っている。おはようございまーすと普通に言った後、目の前の御大に「ドイモイのメンバーです」と告げると、立ち上がりざまの握手とともに発せられた第一声の相槌が「あーー!cool.」と。こういうときはcoolなのかと、日常英会話スキルのなさゆえに面食らいつつ、ご一緒できてうれしい旨を伝えると、おうおうこっちも君達のバンドを楽しみにしてきたよとひとしきり親切な対応。あとでボーカル二村君(仕事で1年間アメリカ滞在歴あり)に、いきなり相槌がcoolでさーと話したら「それはどっちかというとあんまりよく知らんものに対して言いがち」と教えられ、まあ確かにと納得。とりあえずここで、「社交辞令で楽しみとか言ってみたけどまあ、また適当言っちゃったな」と後から思わせることなく、言われたことを事実にするような演奏をせねばと決意。

積み込んだ機材のセッティング待ちでしばらくひまそうな御一行。とりあえず携帯をいじるのは万国共通。東京の知人に「明日やるから来いよ」とでもメールを打っている様子だったアレンから、おもむろに「明日の会場は新宿?渋谷?」と尋ねられ、「んー、しんだいた」とはっきり答える。Shindaita これでいい?と画面を見せられ、そうOKと返事。それでもなおウェブブラウジングをしている様子だったので、同行の東京クルーから仕入れたばかりの小ネタで会話に挑戦。

私:昨日の足のケガは大丈夫ですか?キョウヘイ(註:撮影担当のツチヤキョウヘイ巨匠、昨晩アレンと宿が同室だった)が夜中に、あなたがいきなり何度もファック!ファック!って叫ぶのを聞いてビックリしたって。
(御大を挟んで向こうに座っていたベースのエリックが笑う)
アレン:そーなんだよ、暗闇で何が起きたか分かんなくて、どこかにぶつけて皮むけて、痛かったわ。
私:血出ました?
ア:いやそんなに。そのときは翌日オオゴトになったらどうしようって思ったけど、まあ大丈夫だね。あ、TILTSのTシャツ着てるね!
私:ええ、Kickstarterでバンドルで売り出してたのを買ったんです。彼らとはよくライブしますか?
ア:TILTSはまだ数回だけど、RIDDLE OF STEEL(註:TILTSのメンバーが前にやっていたバンド)はそれこそ100回くらいはやったよ。アンドリュー(註:RIDDLE OF STEEL~TILTSの人)って、何年か前、目に何かの尿がかかって大変なことになったっていう話が、アメリカの全国ニュースになったんだよ。笑ったね。(註:詳細後述)

私:昨日のディナーってあれ何だったんですか?(註:打ち上げの様子を動画でFacebookにアップしていたことについての質問)
ア:タコヤキとかだったかな。うまかったよ。
私:むちゃくちゃ熱くなかったです?
ア:おーー、そう。でも1個目で学習して、2個目からはちょっと待って冷まして食べた。
私:日本に着いて、何か変わったもの食べました?
ア:いや、特にかな。スシとかは別に好きじゃないし。日本のバーガーキング食べたよ。
私:アメリカのと違います?
ア:ちょーっとね。だいたいは同じものだ。

(註:ここから公開後追記)ア:この会場ではよくやるの?
杉:よくっていうかライブ自体、2〜3ヶ月に一度くらいですけど、その中では一番お世話になってますね。
ア:僕らもそんなもんだよ。ツアーに出たら立て続けだけど、地元じゃ3〜4ヶ月に一度だよ。皆んな飽きるからね。
杉:んなことないですよ。音源の制作ペースも早いし良いじゃないですか。
ア:そうだね、新しいものを聴いてもらえるようにはしてる。あと今回はやらないけどカバーもやるよ。最近はケイティ・ペリーとか。楽しんでるよ。ところで君の英語、発音それっぽいよね、どこかで勉強した?
杉:いや一度も海外渡航経験ないんです、MTVだけが先生っす。中学くらいから洋楽が好きで、関心が高かったんです。だから発音はこうでもコミュニケーションは苦手で。
ア:まじ??
杉:あっでも勿論中学高校で習いますよ。で、こんな風だから、ライブの時は「サンフランシスコから来たドイモイです」って言うんです。
アレン&エリック:笑
ア:今日もそれやってよ。
(追記分ここまで)

私:THE UNDERCURRENTって覚えてますか?(註:前回の来日で共演)
ア:おう!わかるよ。まだ活動してる?
私:メンバー4人中2人が地元に帰っちゃって、動いてないですね。
ア:ドラマーとシンガー?結婚したの?
私:そうです!ギターのリョウタさんは覚えてますか?
ア:ああもちろん。彼は大した男だよね。
私:彼、アンカレの後に別のバンドを組んで、アメリカに行ってデイヴ・サーディにアルバム録ってもらったんですよ。
ア:ほんと!?
私:そんでリック・ルービンに会って、DEF JAMからリリースしてやるって話にすらなって、んでも途中で解散しちゃって今はやってないんです。
ア:まじか。デイヴは昔からの友人だよ、SHINERのときに一緒にライブもよくやった。これ…dsardyってのが彼のインスタのアカウント。(といって携帯を見せる)
私:おーー。んでその幻のデモを聴かせてもらったんですけど、もうちょっとスピリチュアルというかサイケデリックというか、アンカレと少し違って、でもかっこいいです。
ア:へえ、聴いてみたいなあそれ。

▼やがてセッティングが整い、三人はステージへ。アンプ類はOSRUMの魚頭さんが全面的に面倒を見ていて、普通にローディーとして活躍している(グローブがプロっぽかった)。途中、古い知り合いらしい人が手土産片手に会いに来て、準備中のアレンが一時退席して受付近くで話し込む。空いた時間でドラムとベースのチェックを済ませ、更に暇そうにしているところで、エリックがRUSHの"Tom Sawyer"を弾き始め、クリス(ドラム)が合わせるというサービスタイムに突入。しかし押さえる音が定かでなかったようで、割とあっさり崩壊。やがてアレンが戻ってチェックし、よしとなったところでズバンと最新作冒頭曲"Again2"を演奏開始…音源そのまんますぎてびびる、というか平らな絵だと思っていたものが巨大な立体になって現れたみたいな、格が違いすぎる生演奏にひさびさに脱帽。「外タレのライブはとりあえずドラムがでかくておーってなるけど、トータルで冷静に見ればまあいろいろだ」と思うくらいにはスレた耳になってしまいましたが、TLATは音源よりも完璧と思えるようなものでした。おおかたの日本人ドラマーはマーシャルをクリーントーンのマスターボリューム2でしか使ってないようなものだと思うくらいの、しなやかなフルテンドラミング。弦の2人もそれを土台に音作りするから、そりゃもう全然別次元の世界だよなと納得。サンプラーとも器用に合わせ、ギターのコードをリアルタイムで解析してスケールにそったハモリをつける恐ろしいヴォーカル用エフェクトも快調に活躍し、完成度がすごい。

▼リハを終えると、同行クルーに連れられて近くのタコ焼き屋に行ったそうですが、あとから聞いたところ相当イマイチな店だったようです。slavedriverと自分達もリハを終え、ほぼオンタイムで本番。1番手の我々、セッティング後演奏開始前にVAN HALENの「1984」アルバム冒頭のテーマをいつも流すんですが、暗転してこれが流れた瞬間フロア後方からヤー!という歓声が。たぶんベースのエリックだったと思います。ここ最近の中でも調子よく頑張れて、終わるとステージそでに御大アレンが来ていて「グレイトショウ」と告げてくれる。握手。

▼すみやかに機材を駐車場の車にハケて、2番手slavedriver。爆音&発散に振り切っているkmkmsに比べると、新川さんのデザイナー気質が現れた音だと思っています。抽象彫刻の如く置かれていくギター×2のフレーズ群が、ベースレスゆえにコンクリ打ちっぱなし的な表情。ポストコアを標榜する国産バンドは数あれど、UNWOUND~ROADSIDE MONUMENTっぽいニオイを放つのはslavedriverをおいて他にいないのでは。

▼して、メインのTLAT。最新作「LOST BEES」からの選曲がやや多めながら、過去の作品からも印象的な曲はだいたい押さえてくれてけっこう嬉しいセットリストでした。サビでふわっと優しくなる"Tragic Boogie"いい曲だなーなど、1曲1曲しっかり噛み砕きながら、冒頭一発目の感動がまったく薄まらずに全編聴けるミラクル。現地アクトの思わぬハードロックアピールに気を良くしたのか、途中不必要に6弦をCに変えてVAN HALENの"Unchained"のリフをちょろっと弾いてすぐDに戻す、メンバー紹介で「こちらエリック・アバート、クリス・メトカーフ、そしてニッキー・シックス(註:MOTLEY CRUEのベーシスト)」「今まで嘘ついてたんだ、おれニッキー・シックスなんだわ」「名古屋から来たTHE LIFE AND TIMESです」と羽目外すなど、いい感じで楽しんでおられる様子。美麗スラッジとでもいうべき"God Only Knows"で本編を締めたあとアンコールでもう2曲披露し、会場ごと大きな感動につつまれながらの終演。

▼終わった後、アレン以外の二人とも話ができました。

私:あなたのドラミング、マキシマイザー全開!て感じでグレイト過ぎましたよ。そういや僕達の音出しのとき、ちょっとRUSHのフレーズ弾いたの気付きました?(註:"Spirit of Radio"や"Tom Sawyer"をこっそり弾きました)
ク:あー!分かったよ。あれってリハのときに僕らもやってたからっしょ。RUSHは大好きで、ツアーで来ると兄と一緒にいつも見に行ってるんだわ、20年で10回行ったな。でも直近は逃しちゃってさ。
私:RUSHのどのへんのアルバムが好きですか?
ク:やっぱり古いやつだね、「HEMISPHERES」とかそのあたり。
私:ワタシが最初に聴いたのは"Stick It Out"(註:93年発売のアルバムに収録されたひときわグランジーな曲)で…
ク:あ~、あれ初めて聴いたときは「何、このクッソつまんないの…」みたいに思ったよ、でも今は好きだね。

エリック:VAN HALENは僕ら3人ホントに好きなんだよ、やってることは違うけど、でも本当に大好き。特にデイヴ・リー・ロス時代だな。サミー・ヘイガーになってからは2~3曲いいのがあったかなってくらいで。「1984」は初めてちゃんと聴いたレコードでさ、発売当時に。
私:ワタシもそうなんです、聴いたのは92年でしたけど。
エ:最新作は聴いた?デイヴが戻ったやつ。
私:えぇえぇ、あれ最高ですね。
エ:そう!最高。
私:モダンな要素もありつつ…
エ:でもちゃんとクラシックなVAN HALENだよね。"New Tattoo"て曲は好きじゃないけど、あとは最高。 …ところでそのTILTSのTシャツ、着てるとこ写真に撮ってアンドリューに送るよ。(といって記念撮影→インスタグラムにアップされて本人からコメントがつくという奇跡な展開)

VAN HALEN絡みの会話は一部アレンとしたような気もしますが。既にちょっと時系列よくわからなくなってます。全員が全員熱くホメてくれたので、TシャツとCD一式を一人ずつに進呈。

▼人も捌けて撤収完了後、打ち上げ会場のStiffSlack横Absenteeへ移動。ここでも落ち着いてたくさん話せました。

ア:ギターあるね、ほらなんか弾いてよ
私:(VAN HALEN "Running With The Devil"を弾く)
ア:(Aメロくらいでようやく気付いて)!
私:(RUSHの"Limelight"を弾く)
アレン&ちょうどやってきたエリック:「Livin' in the limelight~」(適当に歌いだす)
ア:これ知ってる?("天国への階段"を弾き始める)
一同:笑
ア:じゃこれは?"Stairway To Hell"ていうんだけど…(むりやりメジャーキーに移し、ぐだぐだ)

ア:仕事は何やってるの?
私:ウェブサイト作る人です。御大は?
ア:僕はミュージシャンと、週に2日間くらいはバーテン。あと僕とエリックはスタジオを持ってて、ときどきレコーディングもする。
私:(ミュージシャン=TLATでの活動と思って)バーテンですか~
ア:と、ミュージシャンね。「BLUE MAN GROUP」知ってる?あのバックで、僕は青いかっこうじゃないんだけど、こんな風になって演奏すんの。(といって写真を見せてくれる)
私:おおー。楽器は何を?
ア:チャップマンスティックだよ。(註:タッピング専用で弦が10本くらいあるベースっぽい楽器)
私:!ブルーマングループといえば、この人知ってますか?(携帯の画面を見せながら)ジェフ・トゥーリック。
ア:何でジェフ知ってる!?お互い知り合いだよ。
私:彼がやってたSTOMPBOXてバンドが好きで。会ったら日本にファンがいるって伝えてください。
ア:STOMPBOX!!SHINER時代に一緒にライブもやったよ。BLUE MAN GROUPはいろんな土地にキャパの違う劇場があるんだけど、僕はシカゴの中くらいのとこで、彼はニューヨーク(註:だったと思います)のでかいとこでやってる。

私:作品のレコーディングは自前でやっちゃうんでしたっけ?
ア:いや、自分達でもやるけど、TLATの作品は人に録ってもらう。
私:でも技術的には全然やれるんですよね?
ア:むろん、自分達の仕事には自信があるんだけど、パースペクティブを損なうから…パースペクティブ、わかる?(といって携帯で調べた「客観性」の文字を見せてくれる)ほかのバンドを録るのはいいけど、自分達をとなるとダメなんだよ。
私:じゃ、自分達の作品のあらゆる要素を自分でコントロールしたいってことは考えない?
ア:そうだね、うまく行かないな。アルバムに数曲だけ入れることはあるけど。前作「NO ONE LOVES YOU LIKE I DO」のときは何をすべきかわかっててスムーズだったんだけど、最新の「LOST BEES」は難しかったな~…
私:確かに、アルバムごとに全部違いますもんね。
ア:そう。だけど全部TLATらしく聴こえるようになってると思うよ。

続いてクリスとの会話。この人は独特のおもしろいノリがあって和みます。

私:今RUSHがホームタウンに来てて入れ違いってことですか?さっき、直近のツアーを逃したって言ってましたけど。
ク:いや、3万人とか入る会場が、チケット発売後すぐにソールドアウトになるんだよ!
私:そういえば、今日やってた"God Only Knows"の一番最後のパート、RUSHの"Subdivisions"のエンディングを彷彿とさせますよね。
ク:あー!あのダァーーンタカタカタカ… ダァーーンタカタカタカ… ダァーーーン…てとこね!

ク:TILTSのTシャツだね、アンドリューとはRIDDLE OF STEELでよく一緒にやったよ。
私:アレンがさっき、アンドリューのことを「目に何かの尿が入って国民的ニュースになった」って言ってたんですけどそうなんですか?
ク:あーそうそう、何かの動物の…ちょっと害のあるやつが入っちゃって、救急で搬送されたんだって。(註:コウモリでした。→出典
私:ベースのジミー・ヴァヴァクさんもよく知ってますか?彼は今バンドは?
ク:やってないみたいだね。セントルイスのFIREBIRD(註:ライブ会場)で働いてるよ。FIREBIRDはさ~何度かやったことあるんだけど、無駄に広いもんだからお客さんが200人くらいいてもスカスカで、しかもなんかいつもシラーッとしてるんだよね…ジミーはいい奴だけど、なんでずっとあそこで働いてるのかはよく分かんないな。

ク:しかし日本はいいね。名古屋もいい街だと思う。
私:でもまあ特に見どころがないっていうか、トヨタがあるお陰だけでビッグでいられてるような都市ですから。あと、名古屋は妙(weird)な食べ物が多いんですよ。イチゴ味の、オイリーな、生クリームが上にのった、スパゲッティとか…(註:喫茶マウンテンのこと)
ク:(食い気味のタイミングで)それ食べたいね…毎日…。だって俺がweirdだから…(ニヤつく)

クリスとの話は、ヴォーカル二村君の通訳に大いに助けられました。その二村君がひと足早く帰るということでメンバーに挨拶しに行ったら、そこに私も呼ばれて、先に話を聞いた二村君曰く「シカゴでライブしたかったらいい感じにセッティングしてやるからいつでも言いなだってさ」と。思わずわはは!とリアクションしてしまいましたが、アレン先生はすこぶる真面目に、いや本当にその気があれば…と続けてくれるので、こちらもちゃんと礼を言い、即答で約束はできないけど実現の運びにもっていけたら最高です、その折にはぜひによろしく、というのを雰囲気でお伝えした次第。
おおむねアメリカ中心のロックで育って、実際そういう感じの(日本ゆえの誤読感をあまり含まない)ものを目指してやっているので、リアル・アメリカン、しかも最高に尊敬できる人達に認めてもらえたとあって、人生的な何かをいくらか達成した感すらあった日になりました。本気でお呼びがかかったときにこちらがもう存続してないということがないように、彼らがいる間は現役であろうと、勝手に心に決めております。

以上でした。関わった方々、ツアーおつかれさまでした!見ていただいた皆様もありがとうございました!来年はがんばってペース上げたいです。