SCSIDNIKUFESIN

12 Sep, 2015

▼戻りました。長期間放置してるあいだ、「CDをバカスカ買うという前提があったゆえに成り立っていたこのブログ、生活が変化して同じようにやっていくネタもなくなって、どう活用していくか」を人知れず思案しながら、懲りずにギターの運指練習のパターンを考えて実践したり、曲を作ろうとして眠くなったりしていました。

で、たまにFacebookとかで個人的に追っかけてるバンドのことを書いてもあんまり反応なかったりして、そういうことは元々ここに書いていたではないかと、原点に返って(買ったCDでなくとも)耳に入った音楽なり何なりについてアーカイブ的に発表するでもない、ニッチな方々だけ面白がってもらえそうな、さして高級でもないインプレ程度のことを気安く書いてしまえということにさっき決めました。大学時代、サークルの後輩に「社会学的に興味深い」と言われたのも今は昔です。ただ、ぼやっとした感覚も書き留めておくとおかないとではその後の思考への活かされ方が違う。年々知力が鈍っているのを顕著に感じるさなか、頭使っていきたいという、一定の年齢でランニングをはじめたりする人と同じ種類のモチベーションでやっていこうと思います。読み捨て週刊誌程度にお付き合いください。

ちなみに、明らかにちゃんと整理したほうが利用価値が上がる、近場の飲食店事情と、長年追っている外郭/境界上メタル、流され空振りメタル etc.を時代性との関係に注視しつつ一般的な尺度以外から評価するテキストサイト、これは本体と別でいずれまとめたいなという気持ちがここ数年あります。後者はやってどうなるものかよく分かりませんが。

▼てことで今日からさっそく、さっき見たネタをいくつか。全部Youtubeというのが寂しいです。前提知識を共有してない人もそれなりに読みやすいように、よく知ってる人達に関してはちょこちょことバイオ的情報も挟んでいきます。あと、ためしにしばらくSNSでお知らせせずにやってみます。ブックマークしていただいている方どれだけいるんでしょうか!

▼ハイトーンメタルシンガーの代名詞の一人でもあるジェフ・テイトが抜けたあとの本家QUEENSRYCHE、ジェフとの決別をはっきり宣言しながらもかなり似たタイプのトッド・ラトゥーレを入れて復活してますが、分裂してジェフが名乗ったもうひとつのQUEENSRYCHE(同名バンドが2つ存在してアルバムをリリース、その後裁判沙汰になり、大金を得て名義をバンド側に譲ってジェフ側はOPERATION:MINDCRIMEと改名)に比べて俄然評判良いですね。再出発第2弾はクラウドファウンディングで資金を募って制作してました。絶頂期はEMIで数百万枚売って、アコースティックバラードで大ヒットを飛ばしてMTVアンプラグドにさえ出ていた彼らが。そのアルバムがこのほどめでたく完成し、リードトラックになるんでしょうか、動画が公開されています。

何でしょうこの新鮮さは。もっさりしたテンポ感にやたらアクの強いコード進行とリフ。既に洗練されたところに地平があって、選択と編集の成果物を発表するような若手はまず狙ってこないポイント。80年代の幕開けからメタルを続けている彼らとしては、未だ原野のつづきを好きなほうに進んでいる感覚なんでしょうか。ベテランが見せるこういう自由さは好きです。商業エモ台頭以降の「サビだけストンとメロディアスな進行」病にまったくかかってないのが貴重。若いギタリストを入れたのに大して巧くないというのも、なんというか目が覚める感じがしました。掛け合いソロの後半で登場する古株メンバー、マイケル・ウィルトンの謎すぎるフレージングは軽く絶句。ここへきてデビュー当初似てると言われたJUDAS PRIESTのオマージュかと(cf."Painkiller"のズッコケスウィープ)。応援してます本家QUEENSRYCHE。

▼万人が行き来して見慣れたはずの筋のすみっこに「ここからあっち見ると、コレとコレがちょうどこうなって意外な絶景になるんだわ」的なスポットをしつこく見つけてくるのがベテラン現役の仕事なら、新規の若手は「そんなとこにもバイパス通せた!?」的な研究に熱心、てところでしょうか。だいたいはグッと来るに至らずご苦労様としか思わないんですが、たまに「テク、アイディア、『ベタ』との距離と習熟度、『今様』の噛み砕き方、音楽としてのまとまり方、くもの巣グラフにしたら外縁いっぱいいっぱいだな!」とさすがに感服する人達もいて、ノルウェーのプログレメタラーLEPROUSはそんな感じでした。

古典的プログレメタル、ジェント、ドゥーム、デス/ブラックメタル、きょうびのエピック感、多少の正統派メタルあたりを組成としてるようです。いろいろ盛り込みだすと「曲として耳に入ってくるか?」が問題になりがちなわけですが、ズバーンと太いヴォーカルはそれを大いに助けるものです。最後は人。MASTODON+ENSLAVED+デヴィン・タウンゼントですかねーと言ってしまえばまあそれまでですが、ねじ曲がり方になんとなく出来心でない信念を感じる気がしましたよ。

▼こちらは若くて普通なのになぜかベタベタな手垢色に見えず清々しいというケース。アンテナ低くてあんまり知りませんでしたが、グラミー級の売れっ子とは失礼しました。女性ヴォーカルのHAELSTORM

わざと80年代HMっぽくするブームはWOLFHELVETES PORTでじゅうぶん満足してるんですが、この人達は一連のレプリカ芸とは違うものを感じます。年頃の女性の笑顔とメタルシンガー然としたキメ顔をシームレスに往来するこのヴォーカルさん、物心ついた頃から父親が持ってるメタルのレコードを聴いて育ったの。エディヴィック・ラトルヘッドが日常の光景だったわ。とでも言いそうな雰囲気(※裏は取ってません)で、実にナチュラルです。思うに、異質なカルチャーとしてメタルに出会ってのめり込んでいった自覚的メタルヘッズと違って、彼女がもつ「私の好きなこの感覚」に、メタルという名前は別段ついてないんじゃないかという気が。今時の年代の人が普通にバンドをやったときの感じでこれをやってくれているからこそ、身なりから何からばっちり狙った人達よりも聴ける。とか言って「ハイスクールで初めてSUM41に出会ったの」的パターンだったりしたらすいませんが。天然 / 自前って清々しい、「そういう人がいる」って心に留める気になるよね、ということを言いたかっただけでした。グラミー相手に言うてますが。